数学的帰納法とは
数学的帰納法を用いることで、以下の2つを示せば全ての自然数 \( n \) について成立します。
- \( n=1 \) のときに成り立つ
- \( n=k \) のときに成り立つと仮定すると \( n=k+1 \) のときにも成り立つ
数学的帰納法でおさえるべきポイント
下書きをする
当たり前だと思うかもしれませんが、とても重要です。
見切り発車で証明し始めて、途中で全消しした経験があることでしょう。
ノートの端っこに、方針のメモ書きをしてから証明を書き始める癖をつけましょう。
必要項目は2つだけ
数学的帰納法の問題では、考えるべきことは次の2点のみです。
- \( n=1 \) のときに成り立つことを示す
- \( n=k \) のときに成り立つと仮定し、\( n=k+1 \) でも成り立つことを示す
考えることは極力少ない方が良いので、上記2つを求める問題へと置き換えてしまいましょう。
この2点を下書きし、あとは文章の型に当てはめて解くだけです。
例題
ここから例題を用いて、解く流れを説明します。
問題
自然数 \( n \) に対して、\(5^{n+1} + 6^{2n-1}\)が 31 の倍数であることを数学的帰納法で証明せよ。
下書き
まずは下書きをします。
ちょっと冗長になりますが、今回は私が解くときに考えるフローを書いておきます。
実際は数式部分だけでも下書きをすればよいと思います。
- \( n=1 \) のとき:
\[
5^2 + 6^1 = 31
\]
よって OK。 - \( n=k \) で成り立つと仮定。
\[
5^{k+1} + 6^{2k-1}
\]
が31の倍数とする。 - \( n=k+1 \) のとき、示すべき式は以下の通り。
\[
5^{k+2} + 6^{2k+1}
\]
ここで、\( n=k \)での式を使うために、まずは指数をそろえる。
\[
5^{k+2} + 6^{2k+1} = 5 \cdot 5^{k+1} + 36 \cdot 6^{2k-1}
\]
係数が 5 と 36 で異なるので、係数を揃えて\( n=k \)での式を当てはめられる形にする。
\[
5 \cdot 5^{k+1} + 36 \cdot 6^{2k-1} = 5 \cdot 5^{k+1} + 5 \cdot 6^{2k-1} + 31 \cdot 6^{2k-1}
\]
ここで、
- \( 5 \cdot 5^{k+1} + 5 \cdot 6^{2k-1} \) は仮定より 31 の倍数
- \( 31 \cdot 6^{2k-1} \) も 31 の倍数
よって、全体が 31 の倍数。
解答
すべての自然数 \( n \) について、次のことを示す。
\[
5^{n+1} + 6^{2n-1} \text{ は 31 の倍数である。}
\]
- \( n=1 \) のとき、
\[
5^2 + 6^1 = 31
\]
よって成立。 - \( n=k \) のとき、仮定より
\[
5^{k+1} + 6^{2k-1} = 31m
\]
となる整数 \( m \) が存在するとする。 - \[
\begin{aligned}
5^{k+2} + 6^{2k+1}
&= 5 \cdot 5^{k+1} + 36 \cdot 6^{2k-1} \\
&= (5 \cdot 5^{k+1} + 5 \cdot 6^{2k-1}) + 31 \cdot 6^{2k-1}
\end{aligned}
\]
ここで、
- \( 5 \cdot 5^{k+1} + 5 \cdot 6^{2k-1} \) は仮定より 31 の倍数
- \( 31 \cdot 6^{2k-1} \) も 31 の倍数 よって、全体が 31 の倍数である。
[1],[2]より、すべての自然数 \( n \) について成り立つ。
まとめ
数学的帰納法を使った証明では、以下の流れを意識するとスムーズに解けます。
- 最初の値(\( n=1 \) など)で成り立つことを確認する。
- 仮定を明確にし、一般の \( n=k \) で成り立つとする。
- \( n=k+1 \) の場合について、仮定を利用して成り立つことを示す。
特に、指数や係数を工夫して変形することで、仮定を利用できる形に持ち込むのが重要です。
問題ごとに式変形の工夫は異なりますが、「帰納法の枠組み」自体は共通なので、慣れるとスムーズに解けるようになります。